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293 7.13水害の体験談 子ども達を守る覚悟を決めた保育所の松井さん(2/6話)

株式会社エコロジーサイエンス 樋口勲(第8話)

 

「この建物は流されませんよね!?」
「大丈夫だ!とにかく2階で子ども達をしっかりと見ていてくれ!」
私たちは「ここで子ども達を守る」と覚悟を決めました。

幸い保育所2階の未満児室に若干の飲み水やお菓子がありましたので、
子ども達に少しずつ分けて食べさせました。
また、トイレや手洗い水が使えたことも救いでした。
衛生上怖くて飲み水としては使えませんでしたが、それでも幾分か助かりました。

14:30頃だったと思います。
園庭の方を見ると濁流は衰えることがないようで、小屋が流れていく様子が見えました。
水位はブランコの天辺がひたひたと水面に顔を出している状態でしたので
地上から2m以上はあったと思います。

「このまま水が引かないのだろうか。
夜になったら真っ暗になり、子ども達の恐怖は頂点に達するのではないか・・・。」
私は大きな不安でいっぱいになりました。

後の保護者会では「子ども達はしっかりしていて泣くこともなく・・・」と話したのですが、
実際は恐怖に震える子、涙が止まらない子、抱きついて離れない子がほとんどで、
私たちも不安の中、子ども達に「大丈夫だよ。」と声をかけるのが精一杯でした。

私は再び役場との連絡を試みました。
「何とか明るいうちに子ども達を避難させてください!」(つづく)

※新潟県中越大震災から20年ということは、7.13水害(新潟・福島豪雨)からも20年。
 7.13水害の体験談として、7.13水害から5年後の平成21年に地域の方々にヒアリングし、
 信濃川大河津資料館にて紹介したものを読みやすく調整しました。

株式会社エコロジーサイエンス 樋口勲(第8話)