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282 被災現場の人と人(その3)

中越市民防災安全士会 会員 吉原 昌隆(第5話)

 

発災の日の月夜の下、
川口町役場庁舎設置の震度計が記録した「震度7」が送信されず、
1週間後に確認されこととなる事を話題にする者は誰もいなかった。

庁舎前駐車場には、各集落の状況を心配する声、
「傾いた自宅が今の揺れによって倒壊したのではないか」と、
自宅の確認に走る者。
誰も皆、強い余震に怯え、目の前の事態に対応するだけだった。

隣の小千谷市内で本震に揺れた妻と子が、
8キロを歩いて戻り、夜半に駐車場で再開した。

明るくなる頃には、役場職員も増え、
本部といえるような一団が作られていった。
ただ、町内各地の被災状況の把握も出来ない。
家屋倒壊や怪我人の情報も交錯するなど、役場前は混乱の中にあった。

そうした中、記憶すべき光景がそこにあった。
若い親が自宅被害の確認などに駆け回るその時、
小中学生達が幼児を預かり、「青空保育」を始めていたのだった。
誰かに指示されたものではない。
地域の混乱の中で、誰も彼もが余震に怯える中で、
自ら行動する姿がそこにあった。

中越市民防災安全士会 会員 吉原 昌隆(第5話)