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281 和太鼓奏者になるまで(その2)あの日

和太鼓奏者 坂牧颯人(第2話)

 

20年前。当時は種苧原の一番端。
魚沼から来たら一軒目の崖の上の実家に、
両親と祖母、四人兄弟と犬のルクの8人家族で生活していました。
山の中での暮らしなので目新しいものはなく、
兄の真似をして遊んだり、喧嘩して親に怒られたりと言った毎日。

当時の僕は、人見知りで引っ込み思案で恥ずかしがり屋、内気でした。
なので、活発でいろんなところに僕を連れ出して
遊んでくれた兄たちが輝いて見えてました。
弟は当時4歳になったばかり。
ばあちゃんや両親にくっついていました。

両親は自営業で車の整備士をしており、自宅の隣に工場があり、
車だけでなく農機具の修理や整備などの仕事をしていました。

震災当日。あの日は土曜日でしたが、
両親は朝から工場で仕事をしていました。
稲刈りが終わった頃だったので、コンバインの清掃や点検、
秋口の車検のための整備で毎日忙しそうでした。
僕たち兄弟は1日中、
ゴロゴロしてたりゲームしてたりしたんじゃないでしょうか。

夕飯は、焼肉。仕事がひと段落したというのと、
うちみたいに人数が多い家族は何かにつけて焼肉とかしがち。

母はコンバイン清掃から戻ってきてお風呂、
祖母、弟、父は居間のこたつで焼肉の準備。
兄二人と僕は2階の部屋で長男がテレビでゲームしているのを見ていました。
長男のゲームを見ながら自分もやりたくてうずうずしていたのを覚えています。
結局やらせてもらえずタンスに寄りかかっていじけてました。

その時です。パッと電気が消えました。

和太鼓奏者 坂牧颯人(第2話)