中越市民防災安全士会 会員 吉原 昌隆(第4話)
あの日の深夜、月明かりの空は、冷えてきていた。
1階が倒壊した衣料品店フクヤは、
崩れた店先から出せるだけの毛布などを持出し、次から次へ。
この店舗は、1階売場に店員と客が閉じ込められ、
自力で脱出したばかりであった。
食料品店安田屋も、店内外に散乱した飲料品等を
集めるだけ集め、次々に配っていた。
さらに、菓子店舗龍昇堂から
翌日に備えて準備した法事用式菓子が提供されていった。
繰り返す余震、目の前の倒壊家屋、傾いた電柱やブロック塀、
そして、垂れ下がった電線。
多くが夕食もとることなく外に飛び出し、
自宅に戻れず肩を寄せ合う町民にとって、
「お互い様」では言い尽くせないこうした地域の助け合いは、
余震に大きな声が出たその夜、大きな力、支えとなっていた。
職員が集まる場に、地域の状況が少しずつ入って来た。
川口町各地区と連絡が取れない、その状況が分からない。
隣接する町に繋がる国道が両方向で不通となり、
通行中であった車両も動けないでいる。
誰も眠れない夜が続くこととなった。
【執筆】
中越市民防災安全士会 会員 吉原 昌隆(第4話)