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220 マンションの再現

福島県立博物館 主任学芸員 筑波匡介(第10話)(元中越メモリアル回廊担当職員)

 

そなえ館整備時の思い出です。
展示パネル等もほぼ決まり、展示スペースも固まった段階だったと思います。
「ミュージアムと名乗るならば、実物資料にもこだわるべき!」
整備検討委員会での意見でした。

設計変更する時間もない中で、対応がむずかしい問題でした。
なにより震災から6年が経過して、災害当時の事を伝える場所や資料などは
もう地域で目にすることができなくなるほどの時間が経過していました。
もはや当時のことを伝える資料を改めて集めるのは難しい状況でした。

ところが地震で壊れ再建できないままに放置されたマンションが
残っていることが分かりました。
傾き放置された建物は地域の問題となっていました。
その中の一部屋は、6年間放置されたままで、家具や食器が散乱しており、
確かに地震当時の様子が残っていることも知りました。

ただ、割れた窓から侵入した鳩が住処としていて、
そのフンが床一面覆っている状態でした。
住民は趣味で食器類を集められていたのでしょう。
一般家庭よりずいぶんと多くの食器があり、
それらが床一面に散乱しまさに足の踏み場もない状況でした。

ですが、2004年の10月23日以降、人の手があまり加えられなかったこの部屋が
地域では最後の震災当時を伝える場だと考えました。
この部屋の台所をそのまま展示に使うにはどうするか考えました。
(つづく:明日配信)

 

【執筆】
 福島県立博物館 主任学芸員 筑波匡介(第10話)(元中越メモリアル回廊担当職員)