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219 中越から能登へ ③ -被災者がふれあえる向う三軒両隣型仮設住宅配置の工夫-

公益社団法人中越防災安全推進機構 理事長 中林一樹(第15話)

 (新潟県中越大震災20年プロジェクト 実行委員長)

 

中越地震では仮設住宅団地のレイアウトで、
コミュニティの形成に効果的な工夫にも取り組まれた。
そもそもは、積雪地域で通路の除雪作業を軽減するために、
従来の各住戸前面に通路を並列配置するサイトプランに対して、
一般市街地と同じく通路を挟んで玄関が向かい合う向う
三軒両隣(対面配置)型のサイトプランが工夫された。
除雪が必要な通路が半減した。

ところが、思わぬ効用があった。
全戸南面できず、東西向きの配置になるが、
通路からの居室のプライバシーは高く、
住戸タイプの配列をずらして開口部の対面化にも配慮できる。
通路が半減することで住戸増も可能にし、
上下水道の配管も半減し、工期短縮や工事費軽減にもなる。
さらに、郵便などの配達ルート距離も半減して、配達の便を向上させた。
何よりも評価したいのは、通路が居住者には「向う三軒両隣」の出会いの路地となり、
通路ごとの近隣関係が緊密化したことである。

また、仮設住宅の車いす対応が、
通路の奥を住戸の床面の高さに合わせて屋外デッキを設置し、
斜路一本で複数住戸のデッキを繋ぐことによって、
複数の福祉対応住戸を効率的にバリアフリー化できる。
そして、このデッキは路地の屋外交流空間としてみんなで利活用でき、
障害のある被災者の孤立化を防ぎ、近隣でのつながりを強化し、
一人一人の復興へのモチベーションを高める様々な活動空間ともなりえる。

2005年の春、小千谷市の対面配置型仮設住宅では、
この通路にござ敷き、花見の宴が被災者の皆さんで開かれていた。

 

【執筆】
 公益社団法人中越防災安全推進機構 理事長 中林一樹(第15話)

 (新潟県中越大震災20年プロジェクト 実行委員長)