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092 第4話 帰投と仮設住宅の暮らし(その2)

東川口町会 庶務 上村光一(第7話)  :

 

川口中学校のグランドに建設されていた仮設住宅に、まわりよりほぼ1年遅れで入居した。
1フロア完結の間取りは東京で住んでいた住居によく似ていた。
末っ子長男は布団を敷き終えて空いた押し入れをベットにしてなんだか楽しそうだった。

地面からたった5cmの床は除雪のブルドーザーで毎朝5時にガタガタと揺れたが、
家族が一緒にいれることの喜びの方が大きく、
なにより春になれば新築の家に入れるという希望が家族を支えていた。

そういえば、結露で玄関のサッシ戸のレールが凍って、朝、家から出れなくなったことや、
学校から帰って来た長女が玄関を開けようとするがレールが凍りついて開かず、
お隣さんからお湯をもらってようやく入ることができたなんて事が何回かあったなぁ~
今から思えば良い思い出の一つだったかもしれない。

仮設住宅での大きな思い出がもう一つある。
長女に担任の先生から一つの願いが託された。
同じ仮設住宅に住む不登校なった同級生に、
登校時に毎朝声をかけて登校を促して欲しいとの依頼であった。
真面目な長女は正面からそれと向き合った。
来る日も来る日も登校前に無駄とも思える行為を繰り返した。
結果は聞いてはいないが、今や一児の母となった娘の当時の行動を誇りに思っている。

仮設住宅での暮らしは、子供たちの日々の成長を実感させ、
狭い部屋での寄固まった生活は家族の関係をより深めることとなった。
仮設住宅の一冬を経て自宅の建替えが完了、春から両親を迎えての新しい生活が始まる。

 

【執筆】
 東川口町会 庶務 上村光一(第7話)