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091 第4話 帰投と仮設住宅の暮らし(その1)

東川口町会 庶務 上村光一(第6話) :

 

地震発生からしばらくして「週間文春」の見開きに、

玄関先に座って肩を落とし途方に暮れる老人の写真が掲載された。
父であった。懇意の先輩が部門のトップにこの写真を見せて私の帰投を促してくれた。
「帰れるならばポストなど問わない」願いは叶った。

地震の翌年7月、小千谷市の事業所に転勤が認められ単身で川口町に帰投。
傾いていた実家は倒壊した隣家の撤去により傾きが復元し、
何とか住み暮らせるようになってはいたが安全とは言い難かった。
それでも、8月の夏休みを経て妻と子供たちは東京の暮らしを捨てて転居してくれた。
特に長男は小学校のサッカー仲間から大切にされており、
楽しい日々を捨てさせることに心が痛んだ。

転校先は川口中学校・川口小学校。
「こんな時に転入生?」そんな声を後から聞いた。
家の再建に向けて仮住まい探しには手こずったが、
雪が降る前に仮設住宅に入れることになり定住に向けて歩みは一歩進んだ。
(その2へ続く:明日配信)

 

【執筆】
 東川口町会 庶務 上村光一(第6話)