救援物資は、被災者に対する思いやりの表れであり、その気持ちは本当にありがたい。
しかし〝善意〟であるからこそ、それが被災地では生かしきれていないということを
被災地として表明し、新たなルールづくりのための具体的な議論を起こしていきたい、
当時、自治体としては思い切った決断だと、気負って身構えたことを鮮明に思い出す。
さわやか福祉財団理事長だった堀田力さんが、「相手の役に立ってこその〝善意〟。
被災地に即した物資を送るルールづくりが必要だ」と朝日新聞で発言してくれた。
長岡市が「救援物資、受け取りません」という、一瞬えっ!といったアナウンス効果を利用して、
その視野の先にあったのもそこのところだった。
長岡市の新たな防災計画には、
大規模な災害の発生直後は、①何が ②どのくらい ③いつまでに
送られてくるかわからない不特定多数からの小口の救援物資を分類・小分けして、
①必要としている人に ②必要としているものを ③必要としている時期に、
配布することは極めて難しい…ことから、
当面は発生直後における救援物資を受け入れないこととし、応援協定の充実を図り、
これに基づいて企業、自治体等から食料、生活物資等を迅速にかつ必要量を調達し、
NPOなどと連携・協力して、必要物資を迅速に被災者に届けることを明記した。
直後に起こった能登半島地震では、長岡市からの助言を参考に、県が調整役となり、
各市町村で必要なものをリストアップし、必要なものだけを送り主に依頼することで、
生かしきれない物資の山積みを防いだことが新聞・テレビ等で報じられた。
【執筆】
公立大学法人長岡造形大学副理事長 河村正美(第2話)
(前長岡市危機管理防災課長)