· 

066 第3話 自衛隊 魚野川の湯(その2)

関越道対面通行にて開通の一方が流れる。

土曜日の午前3時、ワンボックスカーの後部座席をフラットにして布団を敷き

子供たち3人を乗せて実家に向かう。

 

朝には川口町に着いて子供たちの顔を私の両親・家内の両親に見せ、

その日の夜中に東京に戻る行き来が雪の降るまで続いた。

回を重ねるごとにインフラは整備され徐々に往来は楽になった。

 

ある時「川の堤防の向こうに自衛隊の風呂が出来たすけ、

おめぇたちも入ってこいや」と言われた。

災害支援のための風呂を「ある意味で部外者」である私たち家族が

利用することに気が引けたが、「いいお湯だから入ってこい」と何度も進められた。

 

鉄パイプと厚い布でできた大きな湯舟に、

魚野川から汲み上げられた水を移動式ボイラーで沸かしたお湯がたっぷりと満ち満ちていた。

立ち膝でないと頭が沈んでしまう深い湯舟だった。

「ありがたい」の一言、タオルで汗と涙を拭った。

 

妻の医療支援部隊潜入計画には後日談がある。

国道17号線は余震の度に通行止めになった。

迂回路を走行していると偶然にも医療支援の車とすれ違った。

「私もあの車に乗りたかったなぁ~」「なんで乗せてもらえなかっただろう」

とさんざん文句を言っていた。

長年の経験からこうゆう時には「黙っているに限る」ことを知っていた。

 

冬を越えて川口町への帰投計画が始動する。

 

【執筆】
東川口町会 庶務 上村光一(第5話)